90年代のアメリカ製TVドラマの最高傑作『X-ファイル』は、本作で大スクリーンに進出したが、期待はずれの煮え切らない出来ばえに終わった。当然といえば当然の結果ではないだろうか？ 大体、あるメディアで完ぺきに実現できている素材を別のメディアに移し変える必要がどこにあったのだろう。TVシリーズはテンポがよく、あらゆる細部にまで計算が行き届いているが、最大の魅力となっているのは、複雑で際限なく膨らんでいくストーリー展開である。本作では、この点が少々弱い。映画版ということで、ストーリーに一応の結末が用意されているのだが、そのために作風が型にはまったものになってしまっている。ただ、ファンでない人にとっては理解しやすい内容になったといえるかもしれない。ある程度のスリルや恐怖が盛り込まれているほか、人類とエイリアンの陰謀が今までよりも満足のいくスケールで描かれているが、せいぜいTV版の前後編エピソード程度にしかプロットが発展しないのは残念だ。 FBIの問題児モルダーとスカリーは、一時的にX-ファイル課からテロ対策班へと転任させられ、オクラホマの連邦ビル爆破事件を思わせる爆弾テロの捜査にあたる。やがて2人は、シンジケートとスモーキング・マンの陰謀に関する新事実を発見。陰謀の目的は、あるエイリアン集団（善玉？）を支援して、地球植民地を企む別のエイリアン集団と戦わせることであるらしい。南極を舞台にしたスペクタクルなクライマックスは、TV版のベテラン監督ロブ・ボウマンの腕の見せどころ。ここでモルダーは、生まれて初めて「ある物」をつぶさに目撃（都合のいいことに、この時スカリーは意識不明で目撃できない）。また、シリーズ中画期的な出来事もいくつか発生する。名優マーティン・ランドーが主役の2人に決定的な手掛かりを与える役柄で顔を出すほか、TV版でおなじみの面々（ローン・ガンメンや、ミッチ・ピレッジ扮する存在感抜群のスキナー副長官）が短い時間ながら登場し、忠実なファンに目配せを送っている。（David Chute, Amazon.com）
